マスメディアの変わり身の速さ
前回のニューズレター・エッセイでマスメディア、特に新聞と一部週刊誌の田中真紀子前外相に対するバッシングについて述べた。ところがご存じのように、真紀子さんが外相を更迭されてから論調が微妙に変化した。それまでは真紀子さんをバッシングしても、小泉首相を批判することは注意して避けていた。2002年2月15日号の週刊朝日にのった田原総一郎の「ギロン堂」というコラムを引用しよう。「問題は小泉首相の決着のつけかただ。小泉は、鈴木の議運委員長辞任、野上次官の辞任、そして田中外相の更迭の”三方一両損的収拾”でケリがつくと判断したのだろう。だが大多数の国民は、この決着に強い”ノー”を示した。予想外の強い拒絶反応に仰天したのか、テレビ、新聞はいっせいに”小泉バッシング”となった。従来、新聞の多くは田中外相更迭論だったが、それが一転、擁護論となった。」
前回も引用した毎日新聞の政治記者、岩見隆夫の「サンデー時評」というコラムを引用しよう(サンデー毎日、2002年2月17日号)。「ところで、世間は内情をあまり知らないし、知ろうともしない。田中更迭ショックにぶつかると、悪玉の標的にもう一人、小泉さんを単純に加え、小泉批判の洪水現象が起きた。ある民放テレビ局でも、次々に届くファックスを仕分けすると<更迭反対>が九割になったという。気がついてみたら、有識者のテレビ・コメンテーターも、田中さんは外相に不適格だから更迭されて当然だ、と主張する者がほとんどいなくなっていた。付け足し的に田中さんの行状の一部を批判するくらいで、だれもが<小泉けしからん>コールに同調している。外相更迭論で足並みをそろえていた新聞主要六誌も次のように微妙に変化した。
けんか両成敗は通らぬ(朝日)、小泉改革の信念が疑われる(毎日)、首脳一新を外交再構築に生かせ(読売)、首相の決断を評価したい(産経)、日本外交の再生にはなにが必要か(日経)、ほころんだ小泉政治(東京)
一貫しているのは『産経』だけで、あとは焦点がずれている。NGO問題で田中外相は正しい対応をしたのだから更迭はおかしい、という主張も新聞、テレビで目立ったが、現象面の評価でしかない。皮相的である。」
たしかに新聞各紙は田中更迭を叫んでいたのだから、それが通ったいま、小泉首相を評価し快哉を叫ぶべきはずなのに、世論の動向に仰天して、一転して態度を変えている。一貫しているのは確かに産経と岩見程度である。岩見の国民蔑視の態度も一貫している。別の記事においても岩見は、国民は目を覚ますべきだと説教をたれている。この事件の以前に「週間金曜日」に載った鈴木健二教授の、日本の新聞の政治記者が諸悪の根元説を紹介したいが、長くなるのでよそう。
前回も述べたように、今回の事件は、田中、小泉氏への評価は別としても、新聞は時代の流行に乗っているだけだという司馬遼太郎の言葉を見事に証明したのではないだろうか。